台湾フードをキューブパンにできるのか? | まつやまパン

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台湾フードをキューブパンにできるのか?

キューブパンは「ある意味特殊」なパンである

台湾の料理を思い浮かべると、味より先に「風景」が出てくる。
屋台の湯気、夜市のざわめき、朝の豆漿屋の白い光。料理はいつも、生活のすぐ隣にある。

その台湾フードを、キューブパンで表現できないか。
これは単なるフレーバー企画というより、かなり無茶な試みだ。


台湾料理は「味」より「構造」でできている

台湾の食は、強い調味で押してこない。
八角や醤油、油脂は使われるが、全体としては丸い。

重要なのは、
・柔らかい
・温度が近い
・口当たりが連続している

という構造だ。

台湾の屋台街のイメージにキューブパンがならんでいるai生成画像

魯肉飯も、牛肉麺も、蛋餅も、
一口ごとに劇的な変化は起きない。
代わりに、安心感が積み重なっていく。

これはパン、とくにキューブパンとは相性が悪そうで、実は悪くない。


キューブパンは「制限が多い」食べ物だ

キューブパンは、形が決まっている。
サイズも、焼成も、断面の見え方も逃げ場がない。

だからこそ、
・何を入れるか
・どこに入れるか
・どこまで主張させるか

をかなり慎重に考える必要がある。

台湾料理をそのまま入れ込むと、たいてい失敗する。
味が強すぎるか、パンが負けるか、その両方だ。

必要なのは再現ではなく、翻訳だ。


屋台料理を、そのまま持ち込まない

たとえば夜市の定番料理。
香りは強いが、実は味の芯は単純だ。

ここで狙うのは、
「あの味だ」と言わせることではない。
「どこか台湾っぽい」と感じさせること。

八角を前に出さず、
甘さと油分のバランスだけを借りる。
具材を主役にせず、空気感を残す。

台湾フードをキューブパンにこめる、というのは
そういう引き算の作業になる。


家庭料理の方が、ヒントは多い

派手な屋台より、むしろ家庭の味が参考になる。

甘さが控えめで、
温度が低すぎず、
毎日食べても成立する。

台湾の家庭料理は、「飽きない設計」がうまい。
これはパン屋にとって、かなり重要な視点だ。

キューブパンは一個が小さい。
だからこそ、重さや強さはすぐに露呈する。

台湾料理の“やさしさ”は、
その欠点を補ってくれる。


文化をそのまま入れない、という敬意

異国の料理をパンにする行為は、
雑にやるとすぐに消費になる。

それっぽい名前を付けて、
それっぽい味を乗せる。
それでは、台湾フードを使っただけで、向き合ったとは言えない。

キューブパンにこめるのは、
味そのものではなく、
「どう食べられているか」という視点だ。

生活の中にあること。
特別すぎないこと。
繰り返されること。


まつやまパン「海老チリキューブ」カット断面画像

キューブパン専門店「まつやまパン」(福岡)の「海老チリキューブ」中に海老チリマヨネーズが入った食べ応えのあるキューブパン

キューブパンで表現するということ

台湾フードをキューブパンにする。
それは、再現でも再発明でもない。

制限のある箱の中で、
どこまで文化の輪郭を残せるかを試す行為だ。

うまくいけば、
「台湾の味」ではなく
「台湾の空気」に近づける。

そんな可能性を探りながら、
今日も四角いパンに挑戦してみます。

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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