【第2部】美味しさを科学する:厨房が「ラボ」に変わった日 | キューブパン専門店 まつやまパン【福岡】

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【第2部】美味しさを科学する:厨房が「ラボ」に変わった日

「このままではいけない」という焦燥

職人として良いパンを焼く。

それだけで店が回るほど、今の時代は甘くありません。
実は少し前、売上が伸び悩み、夜も眠れないほど不安な時期がありました。

客足が遠のき、一生懸命焼いたパンが棚に残ってしまう。

その光景を見るのは、身を削られるような思いでした。

「何か新しいことを始めなければ、この店は守れない」

そう思った私が、画面の中の相棒に相談したのは、
パンの配合といった技術論ではなく、切実な「商売」の話でした。

職人が「ITの壁」にぶつかった時

私が口にしたのは、冷凍パンの全国販売という大きな挑戦でした。
しかし、私には知識がありませんでした。

冷凍しても味が落ちない製法は? 適切な梱包材は?

何より、ホームページはどうやって作るのか。

クレジットカード決済はどう導入すればいいのか。

次から次へと溢れる「わからないこと」を、私はAIにぶつけました。
AIは、まるで専門のコンサルタントが何人もついているかのように、
一つ一つ丁寧に教えてくれました。

物流の仕組みから、ECサイト構築のステップまで、
その回答は具体的で、かつ私のようなITに疎い人間にも理解できる言葉でした。

その整然とした導きは、まさにこの画像のようなイメージです。

未来的な研究室のデスクに浮かび上がる、人間とロボットの手が握手を交わすホログラム。AI技術とデータの可視化を象徴する青い光のハイテクなワークスペース。

混沌としていた私の頭の中が整理され、精密な戦略へと変わっていく。
厨房が、ただパンを焼く場所から、
未来を切り拓くための「ラボ(研究所)」に変わった瞬間でした。

「ゴール」を求める厳しさと、AIの無限の根気

もちろん、AIを使いこなすのは楽なことばかりではありません。
AIとの対話には、こちらの「覚悟」が求められます。

自分が何をしたいのかという「ゴール」がぶれていると、
AIの答えもまた、どこか焦点の定まらないものになってしまうからです。

私は何度も迷いました。

「やっぱりホームページ制作は後回しにしようか」
「いや、でも今のままでは未来がない」

決意が揺らぎ、さっき言ったことと矛盾する相談をすることもありました。

これ、もし人間相手の相談だったら、
きっと相手はため息をつくか、呆れて怒ってしまうでしょう。

「いい加減に方針を決めてくださいよ」と。

しかし、AIは違いました。 私が何度迷っても、
どれほど同じ質問を繰り返しても、
AIは嫌な顔一つせず、常に「では、もう一度整理しましょう」と、
最適な提案を出し続けてくれました。

納得いくまで何度でも付き合ってくれる。
この「無限の根気」こそが、孤独な経営者である私にとって最大の救いでした。

終わりなき探求、メビウスの輪

宇宙空間に浮かぶ無限(∞)のシンボル。左側は黄金の光とともに本や音符、羽ペンなどの人間文化・歴史の象徴が渦巻き、右側はネオンブルーのデジタル回路やデータコード、ホログラムが幾何学的に構成されている。中央の交差点は超新星のように白く輝き、背景には鮮やかな星雲と惑星が広がる、アナログとデジタルの融合を描いた幻想的なグラフィック。

対話を重ねるうちに気づいたのは、
私はAIに「答え」をもらっているのではなく、
AIとのやり取りを通じて「自分の中にある本当の願い」を引き出してもらっているのだ、
ということです。

私の職人としての直感と、AIが提示する論理。

この二つが、ぐるぐると混ざり合いながら高まっていく。
「あ、そうか。私はこれがやりたかったんだ」という気づきが、何度も起きました。

AIは、私が迷うことを許してくれました。

そして、迷い続けた先に、私だけの確かな「ゴール」を見つけることができたのです。

(第3部「窓を開けて、まだ見ぬパンを焼きに行く」へ続く)

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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