【職人の告白】「AIのレシピはゴミだった」労働という“残酷な現実”と、アイデアの作り方
【第1部】「AIにパンが焼けるか!」
朝3時の厨房と、眩しすぎるスマホ
パン屋の朝は早い。まだ街が眠っている午前3時、
私は小麦粉の袋を担ぎ、オーブンの火を入れます。
長年、私の相棒は「自分の指先の感覚」だけでした。
生地の弾力、発酵の膨らみ、焼き色の変化。
それこそが職人の魂であり、デジタルなんていう「冷たいもの」が入り込む隙間なんてない。
そう思っていたんです。
だから、知り合いの経営者に
「AI(人工知能)を使えば効率化できますよ」なんて言われた時は、
鼻で笑ってやりました。
「AIにパンの匂いがわかるのか? 焼き立てのパリッとした音を聞いたことがあるのか?」
ってね。
最初の失敗:AIレシピが「大爆死」
それでも、心のどこかで少しだけ好奇心が芽生えてしまったのが運の尽き(あるいは幸運の始まり)でした。 こっそりスマホを取り出し、話題のAIにこう聞いてみたんです。
私:「誰も見たことがない、斬新で最高に美味いカレーパンのレシピを教えてくれ」
数秒で返ってきた答えは、スパイスの配合から生地の加水率まで、
実に見事な「正解」っぽく見えるものでした。
私は半信半疑で、その通りに作ってみたんです。
結果は、大爆死。
見た目はそれなりでしたが、味のバランスがバラバラ。
何より、うちの店が大切にしている「毎日食べたくなる安心感」がこれっぽっちもなかった。
「ほら見たことか。機械に味の正解なんて出せっこないんだ。」
私は勝ち誇った気分で、そのパンをゴミ箱……ではなく、
自分の朝飯にして(勿体ないですからね)、AIとの付き合いを終えるつもりでした。
「答え」ではなく「対話」を求めてみた
でも、ふと思ったんです。
「もしこいつが、レシピ本じゃなくて『新入りの見習い』だったら、私はどう教えるだろう?」と。
翌日、私は聞き方を変えてみました。
「うちの店の常連さんは、少し甘めの生地が好きなんだ。
でも、今のスパイスだと生地の甘みが消されちゃう気がする。
お前なら、どうやってこのバランスを取る?」
するとAIは、こう返してきました。
「それは面白い課題ですね。甘みを引き立てるために、
隠し味に〇〇を足すか、あるいは発酵時間を少し調整して
熟成感を出してはどうでしょうか? いくつかパターンを考えてみましょう。」
驚きました。AIは「これが正解だ」と押し付けるのではなく、
私のこだわりを汲み取った上で、一緒に悩んでくれたんです。
画面越しの握手
その時、私の中で何かが変わりました。
AIは、私の仕事を奪う魔法の杖でもなければ、冷たい計算機でもない。
私の知的好奇心をぶつけ、共に高みを目指すための**「対話のできるパートナー」**なんだと。

この古い書斎の画像を見てください。
ボロボロのノート(私の経験)と、最先端のデバイス(AI)が並んでいる。
そして、その中心で交わされる握手。
これこそが、頑固なパン屋の店主が、デジタルの相棒と手を取り合った瞬間のイメージです。
(もちろんこれを書いたのはAIです)
粉まみれの手で、慣れないスマホを操作しながら、
私は今、かつてないほどパン作りが楽しくなっています。
さて、次はこいつと一緒に、この「勘」を「科学」に変えていく話をしましょうか。
(第2部「厨房が『ラボ』に変わった日」へ続く)

