パンをテイスティングしてみよう|パン・テイスティング入門② | まつやまパン

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パンをテイスティングしてみよう|パン・テイスティング入門②

嗅いで、噛んで、味が立ち上がる

見ることを終えたら、ここからは嗅ぎ、味わう段階に入ります。
パンのテイスティングは、ここから一気に情報量が増えていきます。

ただ、難しく考える必要はありません。
すでに私たちは、普段から同じことをしています。
それを、少しだけ丁寧にやるだけです。

バゲットの断面に顔を近づけ香りをかいでいる。パンの断面は手で割ったような断面です。

アロマとフレーバーは別物

まずは香り。

アロマとフレーバーは、どちらも「香り」と訳されますが、意味は異なります。
アロマは、鼻で感じる香り。
フレーバーは、口の中から鼻へ抜けて感じる香りです

パンを食べる前に、まず香りを嗅いでみてください。
このときのコツは、
クラム(中身)とクラスト(皮・耳)を分けること。

クラストの香りは強く、
クラムの淡い香りは、どうしても隠れてしまいがちです。
分けて嗅ぐと、それぞれの役割がよくわかります。

噛むという行為は、すでに始まっている

いよいよ食べてみます。
ここでも、クラムとクラストを分けて食べると、違いがつかみやすくなります。

実は、噛む前から、体験は始まっています。
唇に触れたとき。
歯に当たったとき。
舌に乗ったとき。

前歯と奥歯でも、役割は違います。

前歯は、噛み切るためのもの。
ここでわかるのが、歯切れです。
すっと切れれば歯切れがよく、
なかなか切れなければ「引きが強い」と表現します。

この引きの強さは、グルテンのつながり方の反映です。
ぱりぱり、ばりばり、ざくざく、がりがり。
食感の違いは、クラストの厚さや生地構造から生まれます。

奥歯は、すりつぶすためのもの。
ここでは弾力がわかります。
ふわふわ、もちもち、ぷるぷる、ふにゃ。

ふわふわともちもちを同時に感じる
「ふわもち」という状態もあります。

溶けが、甘さを連れてくる

噛み進めると、生地は唾液と混ざり合っていきます。
このとき、唾液中の酵素によって生地は分解され、
糖分へと変わっていきます。

だから、噛むほどに甘くなる。

舌で感じる五味
甘味、塩味、酸味、苦味、旨味
そこに、辛味や渋味が重なってきます。

溶け方も、重要な個性です。
速く溶けるのか。
ゆっくり溶けるのか。
しゅわっと、とろとろ、ふにゃっと。

生地感の違いが、そのまま表れます。

フランスパンをかじりつく画像。白い歯がバゲットに刺さるようにかぶりついている。

味のあとに残るもの

味とフレーバーは、分けて考えると理解が深まります。
味は舌で感じるもの。
フレーバーは、口の奥から鼻へ抜ける香りです。

香りの種類は無数にあります。
ここですべてを言葉にするのは難しい。
そのため、章末のコラムで整理する予定です。

パンを飲み込んだあとも、体験は終わりません。

喉で感じる甘さ。
口の中に残る香り。

べたっとした甘さや、嫌な香りが残ると、印象は下がります。
一方で、香りの引きがよく、
心地よい甘さが静かに残ると、いい後口になります。

板の机の上にバゲットが横たわっている。

なぜ、バゲットから始めるのか

では、実際にテイスティングしてみましょう。

ここでは、バゲットを選びます。
理由はシンプルです。

バゲットは、
小麦粉、水、塩、酵母。
たった4つの材料でできています。

余計な要素がないからこそ、
小麦、発酵、焼成の違いが、そのまま表れます。

バゲットがわかるようになると、
他のパンも、自然と読み解けるようになります。

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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