パンを投げて年を越す国があるらしい|アイルランドの年末パン事情 | まつやまパン

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パンを投げて年を越す国があるらしい|アイルランドの年末パン事情

パンは、食べる前に投げるものだった?

年末年始と聞いて、
パンを壁に投げる光景を思い浮かべる人は、
まずいないと思う。

アイルランドの年末年始に行われる、パンを使った厄払いの風習をユーモラスに表現したビジュアル

ところが、
アイルランド には、
そんな少し乱暴で、
でもどこか微笑ましい風習がある。

年末年始に、
パンを家の壁やドアに
「バンッ」とぶつける。

目的はただ一つ。
悪い運を追い出すためだ。

家中をパンで叩いて回る

この風習では、
大晦日や新年を迎えるタイミングで、
家族が家の中を回る。

壁。
ドア。
玄関。

パンを手に持ち、
各所を「バンバン」と叩く。

音と衝撃で、
悪霊や悪い運気を追い払い、
代わりに良い精霊と幸運を呼び込む。

文字にすると少し物騒だが、
やっていることは案外、
日本の節分に近い。

なぜパンなのか

豆でも、石でもなく、
なぜパンなのか。

西洋社会では、
パンは「日々の糧」の象徴だ。

生きること。
食べること。
豊かさそのもの。

そのパンを使って厄を払うのは、
「新しい年も食べ物に困りませんように」
という、
とても切実で現実的な祈りでもある。

いパンで、新しい年を迎える

使われるパンは、
新しく焼いたものとは限らない。

クリスマスや年末に焼いた
バームブラックなど、
少し古くなったパンが使われることもある。

「古い年の残りもので、
新年の悪運を叩き出す」

この発想が、
なんとも人間らしい。

パンをかじってから投げる理由

一部の地域や説明では、
家長がパンを三口かじってから
ドアに投げつけるという話もある。

三口。
これは、
キリスト教の「三位一体」を意識したもの
だとも言われている。

厄払いにも、
宗教的な文脈がきちんとある。

雑に見えて、
実はとても丁寧だ。

キューブパンに願い事こめている様子をリアルな感じ

投げたパンは、ちゃんと食べる

ここが、この風習のいちばん面白いところだ。

壁やドアにぶつけて
割れたり欠けたりしたパンを、
そのまま捨てることはしない。

家族で分けて、
ちゃんと食べる。

悪運を追い払ったパンを食べることで、
その年の幸運や加護を
体の中に取り込む。

理屈はよくわからないが、
納得感はある。

豆まきと、だいたい同じ

こうして見ると、
この風習は
日本の豆まきと構造がよく似ている。

・物を投げる
・音を出す
・邪気を払う
・食べ物の豊かさを願う

素材が豆かパンかの違いだけで、
考えていることは、ほぼ同じだ。

男の子と女の子がキューブパンを家のドアに向かって投げつけている風景

日本でやるなら、どうするか

もしこの風習を
日本向けにアレンジするとしたら、
なかなか面白い。

バゲットで壁を
トントン叩いて
「バームブラックする」。

あるいは、
パンを投げる代わりに、
キューブパンを
「福呼びパン」として
玄関に飾る。

投げるのは少し勇気がいるが、
置くだけなら、
だいぶ平和だ。

パンは、縁起物にもなれる

パンを投げる代わりに、キューブパンを「福呼びパン」として玄関に飾る。

パンは、
ただの食べ物ではない。

国が変われば、
厄払いの道具にもなる。

投げられて、
叩かれて、
最後は食べられる。

そんな役回りを
全部引き受けているところが、
パンらしい。

年末年始、
もし余ったパンがあったら、
少しだけ思い出してほしい。

世界のどこかでは、
そのパンで
一年を清めている人たちがいる。

そう思うと、
パンを見る目が
ほんの少し変わるかもしれない。

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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