七草がゆとパンのあいだで、少し迷子になった話 | まつやまパン

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七草がゆとパンのあいだで、少し迷子になった話

七草がゆとパン。
この二つには、正直なところ、直接の伝説も古い民話もほとんどない。
それでも近年、「七草の意味」を引き継ぎながら、パンに転用する試みが増えている。

七草がゆの説明画像

七草を刻んで生地に練り込む七草パン。
七草をオリーブオイルで和えてのせる七草トースト。
余った七草がゆをカレーにして、さらにトーストにする二段構え。
台湾では七草粥に揚げパンを添える例もあるらしい。

話を聞いている分には、どれも悪くない。
むしろ、ちゃんと筋が通っている。

「正月で疲れた胃を休める」
「無病息災を願う」
この七草がゆの意味を、
“具材=七草”として残しつつ、
“主食の形”だけをパンに変える。

とても現代的だ。

当然、試してはみた

パン屋をやっていると、
こういう話はどうしても気になる。

七草を練り込んだパン。
七草トースト風のアレンジ。
「七草がゆならぬ七草パン」というコピー。

トーストの上に目玉焼きと七草を配置して焼いているのを上から見た画像

頭の中では、
だいたい成立している。

だから、実際にやってみた。
生地にも入れた。
表面にも散らした。
焼いた。

結果から言うと、
決して失敗ではないが、成功とも言い切れない

味は悪くない。
意味もちゃんとある。
でも、どこか落ち着かない。

キューブパン、白い生地と緑の生地を重ねて焼きあげている。そのパンの断面図

七草は「主役にならない」食材だった

やってみて気づいたのは、
七草は「前に出る」食材ではない、ということだ。

七草がゆがおいしいのは、
主張しないからだ。
体を休ませるための料理だから、
味も存在感も控えめでいい。

パンは違う。
どうしても、
「おいしさ」や「満足感」が前に出る。

そこに七草を入れると、
七草の意味は守れるが、
パンとしての気持ちよさが少し揺らぐ。

どちらが悪いわけでもない。
ただ、役割が違った。

行事食を“横にずらす”という発想

七草パンの試みは、
文化を壊すものではないと思う。

キューブパンの上部をくりぬいて椀のようにしたて、「七草かゆ」を入れて食べようとしている女の子。ユーモラスな雰囲気の漫画風

むしろ、
「行事食の意味を、生活に合わせて横にずらす」
という、とても誠実なアレンジだ。

朝はパン派。
おかゆは苦手。
それでも七草の行事には参加したい。

その気持ちは、よくわかる。

ただ、
すべてを商品にしなくてもいい、
ということも同時に学んだ。

すべては、やらなくてもいい

パン屋をやっていると、
「できそうなこと」は山ほどある。

意味もある。
物語も作れる。
季節感もある。

でも、
できることと、
やるべきことは、
必ずしも一致しない。

七草とパンは、
考えるには面白かった。
試す価値もあった。

けれど、
毎年やらなくてもいい。

そう判断できたのも、
実際にやってみたからだ。

も試しはしたが、
やらなくていいこともあると学びました。

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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