人気の菓子パンTOP5[続編]|マリトッツォが残した“デザート型パン”の革命 | まつやまパン

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人気の菓子パンTOP5[続編]|マリトッツォが残した“デザート型パン”の革命

明るい空が見える窓のあるカフェのショーケースに並ぶマリトッツォ。カラフルな断面と多彩な味 どれにしようか迷っている日本人黒髪男性やさしそうな雰囲気

ブームは去っても、香りは残る。

2021年ごろ、SNSを中心に爆発的な人気を誇った「マリトッツォ」。
まるで雲のような生クリームをたっぷり挟んだ姿は、
“映える菓子パン”の代名詞として一時代を築きました。

イタリアの伝統的なお菓子ですが
福岡のとあるパン屋さんが提供を始めて爆発的なブームを巻き起こしました。
類似したお菓子も多く販売されていた記憶があります。

しかし、ブームが過ぎた今でも、
マリトッツォはパン文化に新しい感性を残しています。
それは——「菓子パンがスイーツに近づいた瞬間」でした。


イタリア・ローマの朝食から始まった物語

マリトッツォ(Maritozzo)は、もともとイタリア・ローマ地方の伝統菓子。
柔らかいブリオッシュ生地に生クリームを挟んだ、
素朴で優しい朝食用のパンでした。

名前の由来は“Marito(夫)”から。
かつて男性が婚約者に贈るパンとして作られたとも言われています。
つまり、マリトッツォは愛を包んだパン
その甘さは、単なる流行ではなく文化の温度を持っているのです。


なぜ日本でこれほど人気が出たのか

マリトッツォがヒットした理由は、
単なるビジュアルではなく“時代の欲求”に応えたから。

  1. コロナ禍のストレスで「ご褒美スイーツ」需要が高まった。
  2. クリームの量=贅沢の象徴として共感された。
  3. 見た目の丸み・白さが“安心感”を与えた。

人は不安な時代に“やわらかいもの”を求める傾向があります。
マリトッツォは、その心理をまるごと包み込むような存在でした。


“映える”だけじゃない。パン職人が注目した本質

実は、パン職人の間でもマリトッツォは高く評価されています。
理由は、生地とクリームの水分バランスの妙

ふんわりブリオッシュは、冷やしても硬くならない。
クリームを挟んでもべたつかない。
この“軽さと保形性の両立”は、製パン技術の結晶です。

つまりマリトッツォは、パンとして完成されたスイーツ
外見の派手さよりも、職人が驚いたのはその構造の美しさでした。


ブーム後の“マリトッツォ進化系”たち

ブームが落ち着いた現在でも、
マリトッツォの技術と発想はさまざまな形で受け継がれています。

  • ティラミスマリトッツォ:マスカルポーネを使い、苦味と甘味の対比を楽しむ。
  • 抹茶マリトッツォ:和素材との融合で、まるで“和菓子パン”。
  • フルーツマリトッツォ:季節の果実を使い、彩りで四季を表現。

ブームが去っても、派生パンが定着したのは、
マリトッツォが“技術と感性のプラットフォーム”だったから。


まとめ|パンは進化を止めない

マリトッツォが教えてくれたのは、
「パンは見た目でも、感情でも楽しめる」という事実です。

ブームという波が去っても、
残るのはその“甘さの余韻”と“職人の知恵”。
あのふわふわのクリームは、
パン文化の新しい扉を開けた象徴として、今も静かに息づいています。

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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