人気の菓子パンTOP5[続編]|塩バターロールがスイートになった日 | まつやまパン

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人気の菓子パンTOP5[続編]|塩バターロールがスイートになった日

キャラメルやチョコレートなどが湯煎鍋で溶かされている

シェフが塩を加えて甘じょっぱいソースを作っている

甘じょっぱさに、人はなぜ惹かれるのか

「塩バターロール」がブームになったのは2014年ごろ。
外はパリッ、中はじゅわっとバター。
一度食べたら忘れられない、あの“塩×バター”の誘惑

けれどここ数年、塩バターロールは**“進化系スイート”**として再び注目されています。
そう——甘くなったのです。


塩味が引き出す“甘さの真価”

スイーツの世界では「塩」は古くから“味を締める魔法”として使われてきました。
キャラメルやショコラに塩をひとつまみ加えると、甘さの輪郭が際立つ。
パンでも同じ。

塩バターロールの魅力は、
甘さを“強調するための塩味”という逆説的な構造にあります。
つまり、塩は甘さの味方なのです。


“スイート塩バター”という新ジャンルの誕生

各地のベーカリーで登場しているのが、
「スイート塩バターロール」「シュガーバター塩パン」「はちみつ塩ロール」など。

共通点は、塩味を残したまま甘さを重ねていること。

  • グラニュー糖をまぶして“シャリッ”とした食感をプラス。
  • バターに蜂蜜を練り込んで“甘じょっぱい香り”を演出。
  • フランス塩を使い、後味にキレを出す。

結果、塩気が甘さを押し上げ、**「後引くパン」**に変わりました。


職人が語る、“焼きすぎない勇気”

塩バターロールをスイートに仕上げるコツは、火入れのバランスにあります。
塩分が多いと焦げやすく、焼き過ぎると苦味が出る。
だから職人はギリギリの温度帯で止める。

そして、冷めた後に甘みを塗る。
熱で香りを閉じ込め、仕上げで香りを“開く”。
そのタイミングこそ、甘じょっぱさの黄金比なのです。


“バターリッチ=罪悪感”という誤解

「バター=太る」と思われがちですが、
実は発酵バターには香り成分(ジアセチル)や短鎖脂肪酸が含まれ、
少量でも満足感が高い。

つまり、塩バター系スイートは“満足度の高いパン”。
糖質や脂質を抑えるより、心の幸福感を上げるパンとして食べるのが正解です。


甘さと塩の関係は、まるで音楽

甘さがメロディなら、塩はリズム。
ふたつが合わさることで、“味のハーモニー”が生まれます。
塩バターロール系スイートは、その最もシンプルで美しい形。

**食べた瞬間に「ほっとする」**のは、
人間の体が“塩と甘さの調和”を本能的に求めているからかもしれません。


まとめ|塩が教えてくれる“やさしい甘さ”

塩バターロールがスイートになったことで、
パンはまた新しい“やさしさの段階”に進みました。

外のカリッと感、内側のじゅわっと感、
そしてその間にある塩気と甘さの会話
その絶妙な一瞬を閉じ込めたパンは、
まるで小さな贈り物のように、日常を少しだけ明るくしてくれます。

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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