トレンドと定番を両立させるキューブパン設計|流行に振り回されない専門店の作り方
トレンドだけの店は、長く続かない
パンの世界では、数年ごとに強いトレンドが現れる。
マリトッツォ、クロワッサンロール、高加水パン。
注目を集める一方で、
トレンドだけに寄った店は、
ブームが去ると一気に苦しくなる。
逆に、定番だけの店も、
新規客の入口を作りにくい。
この二つをどう両立させるか。
ここに、専門店設計の核心がある。
専門店は「軸」を一つだけ持てばいい
まず考えたいのは、
トレンドと定番を分けて考えすぎないことだ。
両立の鍵は、
変えていい部分と、変えてはいけない部分を分ける
という設計にある。
キューブパン専門店の場合、
変えてはいけないのは「形」と「構造」だ。
四角いフォルム。
やわらかく、口溶けのいい生地。
ここが軸として固定されていれば、
中身や表現は、驚くほど自由になる。
トレンドは「中身」に閉じ込める
トレンドは、
店全体に広げると危険だ。
ロゴを変える。
世界観を変える。
主力商品を全部入れ替える。
これをやると、
ブームが終わった瞬間に、
店の輪郭がぼやける。
キューブパンの場合、
トレンドはフィリングやトッピングに閉じ込める。
季節のフルーツ。
話題のスイーツ。
一時的に注目されている食材。
箱の中身だけを更新する。
箱そのものは変えない。
これが、
流行に強い構造だ。

定番は「戻ってくる場所」を作る
定番商品は、
売上を支えるだけの存在ではない。
重要なのは、
「戻ってくる理由」になることだ。
初めて来た人は、
トレンド商品に惹かれて入店する。
二度目、三度目は、
「あれが食べたい」と思い出して来る。
キューブパンでは、
プレーン、ミルク系、定番甘味、シンプル惣菜。
こうした構造がわかりやすい定番が必要になる。
定番は、
変えないことが価値だ。
定番があるから、攻められる
面白いのは、
定番がしっかりしているほど、
トレンドを攻められることだ。
「いつものキューブパンがある」
という安心感があるから、
少し尖ったアレンジにも手が伸びる。
定番は、
守りではなく、
攻めるための土台になる。
商品数を増やしすぎない設計
トレンドと定番を両立させようとして、
商品数を増やしすぎる店は多い。
だが、
選択肢が多すぎると、
選ぶ楽しさより疲れが勝つ。
キューブパン専門店では、
・定番ライン
・期間限定ライン
この二層構造がちょうどいい。
定番は常に同じ場所に。
トレンドは入れ替わる。
視線の動きが、
自然に設計できる。

「専門性」は削らない
トレンドを取り入れるとき、
最も危険なのは、
「別の店みたいになる」ことだ。
キューブパンなのに、
ただのスイーツに見える。
ただの総菜パンに見える。
それでは意味がない。
何を入れても、
最後はキューブパンに戻る。
この状態を保つことが、
専門性を守るということだ。
流行を「消費」しない
トレンドは、
追いかけるものではない。
使うものだ。
流行っている要素を、
自分の型に流し込む。
キューブパンは、
そのための型を、
すでに持っている。
四角い構造。
やわらかい中身。
切ったときの断面。
この器がある限り、
トレンドは味方になる。

キューブパン設計の本質
トレンドと定番を両立させるとは、
流行に乗り続けることではない。
変わらないものを決めたうえで、
変わる部分を楽しむことだ。
キューブパンは、
その設計思想を
とても素直に体現できるパンである。
だから、
キューブパン専門店は成立する。
一時的なブームではなく、
構造として、
長く続く理由がある。
