メロンパンはなぜ「丸」なのか?歴史の謎と、福岡で出会った“四角い”進化系メロンパンの衝撃【寄稿文)
【はじめに】メロンパンの「円」に隠された、100年の迷宮
パンの歴史を紐解くことは、文明の地層を掘り起こす作業に似ています。

私たちにとって最も身近な菓子パンの一つ、「メロンパン」。
その起源には諸説あり、1910年頃に帝国ホテルのアルメニア人職人がフランスのガレットを元に考案したという説、あるいは1930年代に神戸の職人が旭日旗をモチーフに「サンライズ」として売り出したという説など、今もなお多くの謎に包まれています。
「丸か、楕円か。日の出(サンライズ)か、果実か……」
そんな歴史の迷宮を彷徨っていた私が出会ったのは、これまでの常識を鮮やかに裏切る、「正方形」のメロンパンでした。
なぜ形が違う?知っておきたいメロンパンの豆知識
本題に入る前に、日本のメロンパン文化がいかに多様であるかを整理しておきましょう。実は、地域によって「メロンパン」の定義は異なります。
メロンパン vs サンライズ 比較表
| 項目 | 一般的なメロンパン(関東など) | 関西の一部に残る「メロンパン」 |
| 形状 | 丸型(円形) | ラグビーボール型(楕円) |
| 中身 | なし(生地のみ) | 白あんなどが入っていることが多い |
| 表面 | 網目模様のクッキー生地 | 溝のあるクッキー生地 |
| 別名 | サンライズ(関西での呼称) | – |
このように、メロンパンは時代や場所によってその姿を変えてきました。そして今、福岡の地でさらなる進化を遂げていたのです。
福岡で見つけた四角い新星『まつやまパン』の挑戦
福岡市城南区に店を構えるキューブパン専門店**『まつやまパン』。
そこで私を待っていたのは、端正な立方体の姿をした「キューブなメロンパン」**でした。
一目見た瞬間、その愛らしさに目を奪われます。店頭でも「かわいい!」と声を上げるお客様が多いというそのビジュアルは、単なる四角形ではありません。
私が注目する「バルーン状」の網目
特筆すべきは、表面の網目模様です。
通常のメロンパンとは異なり、網目の一つひとつがバルーンのようにぷっくりと膨らんでいます。
この立体感こそが「美味しそう!」という直感的な期待感を抱かせるポイント。型の中で緻密に計算された発酵と焼き上げが行われている証拠です。
どこを食べても「主役」。キューブ型が生む究極の食感

なぜ、あえて「四角」なのか?
そこには、美味しさを最大化するための合理的な理由がありました。
1. 「端っこの物足りなさ」からの解放
丸いメロンパンには必ず、クッキー生地が薄くなる「端っこ」が存在します。しかし、全面をクッキー生地で包み込み、型に入れて焼き上げるキューブ型には、手加減というものがありません。
角(かど)を噛むたびに、小気味よい音とともに甘美なバターの風味が弾けるのです。
2. ブリオッシュの潤いを閉じ込める「箱」
ベースとなるのは、リッチな配合のブリオッシュ生地。
全面を覆うクッキー生地が「蓋」の役割を果たし、焼き上げ時に中の水分とバターの香りを逃しません。
- 外側: 型に接することで生まれる、全面カリッと香ばしい食感
- 内側: バターのふんわり感をクッキーが包み込み、驚くほどしっとり
一口齧れば、「どこを食べても主役だ」という贅沢な確信に包まれます。
【まとめ】歴史を一口で飲み込む、幸せな体験
明治・大正から続くメロンパンの長い旅路。
帝国ホテルの職人も、神戸のパン屋も、まさか100年後の未来に、メロンパンがこれほどまでに完璧な「箱」へと進化するとは想像もしていなかったでしょう。
「かわいい」という感動と、「理にかなった美味しさ」の両立。
福岡で見つけた四角い新星は、私たちのメロンパン概念を鮮やかに塗り替えてくれます。

明日、あなたが手にするパンが、単なる食事ではなく「文化の進化」を感じる一杯のコーヒーのような存在になりますように。

