パン職人が教える“解凍ミスを防ぐ”冷凍保存の黄金ルール | まつやまパン

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パン職人が教える“解凍ミスを防ぐ”冷凍保存の黄金ルール

解凍の失敗=保存のミス、という事実

「解凍しても美味しく戻らない…」その原因の多くは、実は“冷凍の仕方”にある
パンは生き物のようにデリケートで、冷凍庫に入れた瞬間から水分と香りが逃げ始めます。
解凍時にパサつく、硬くなる、香りが薄れる——それは“保存時点での温度変化や乾燥”が原因です。
パン職人の視点から見れば、冷凍パンの美味しさを守る第一歩は、保存段階の科学にあります。


実験ノート①:冷凍するタイミングで味が変わる

パンを焼き上げたあと、冷めきる前に冷凍するのが黄金ルール。
人肌より少し冷めた40〜50℃くらいでラップすれば、水分が閉じ込められ、霜の原因になる蒸気も減らせます。
完全に冷めてから冷凍すると、パン表面から水分が逃げ、再加熱しても“スカスカ食感”に。

実験結果:

  • 熱々のまま冷凍 → 霜が大量発生
  • 冷めすぎてから冷凍 → 乾燥・香り飛び
  • 40℃前後でラップ → 香り・水分とも安定◎

冷凍パンは「焼きたてを止める」イメージで保存すると成功します。


実験ノート②:空気と霜のバランスを制する

パンが冷凍庫で劣化する最大の敵は乾燥と酸化
ラップで包むだけでは不十分で、二重密閉が基本です。
まずパンを1つずつラップで包み、
次にフリーザーバッグへ入れて空気をしっかり抜く。
さらに、新聞紙やキッチンペーパーでくるむと
温度変化を緩やかにでき、霜の発生を防ぎます。

職人メモ:

「パンは冷気に直接触れると“冷凍焼け”する。
だから、包み方も“衣”を着せる感覚で。」

保存期間の目安は2〜3週間。
長期保存したい場合は、冷凍庫の開閉回数を減らすのも重要です。


実験ノート③:冷凍庫の開閉が“味の敵”

パンは温度変化に敏感です。
冷凍庫の開け閉めによるわずかな上昇でも霜が発生します。
特に家庭用冷凍庫は食品の出し入れで庫内温度が3〜5℃変動することも。
この小さな変化が、解凍時の“パリッと感”を失わせる原因になります。

対策:

  • パン専用スペースを設け、開閉の影響を受けにくくする。
  • 他の食品と一緒に詰めすぎない。
  • 急速冷凍モードがある場合は必ず使用。

パンは静かに眠らせることで、美味しさを守れます。


職人ノート:冷凍パンは「保存で完成する」食べ物

パン職人にとって冷凍とは、味を守るための延長技術。
“保存”という工程を制御できる人だけが、“解凍で失敗しない人”になれます。
冷凍庫を小さなパン工房と考えて、温度・湿度・包み方を管理する——
それが家庭でもできる、プロの冷凍保存の基本です。


まつやまパンの冷凍保存設計

まつやまパンでは、パンの中の水分分布をコントロールするため、
焼成後すぐに急速冷凍を行っています。
立方体の形は、冷気が均等に当たるための“冷凍効率設計”。
職人の経験と物理学の掛け合わせで、
家庭の冷凍庫でも美味しく解凍できるパンを目指しています。

つまり、まつやまパンのキューブパンは“冷凍に強い構造”。
保存と解凍、両方の実験結果が詰まったパンです。


まとめ|冷凍の技術が、パンを未来へ運ぶ

冷凍保存は単なる保存ではなく、パンを未来へ運ぶ技術です。
冷凍時の温度変化、霜、乾燥、すべてをコントロールできれば、
家庭でも“職人級の解凍”ができます。
次にパンを冷凍するとき、ただ入れるのではなく、
少しだけ科学者の気持ちで——それが、パンを美味しく守る一番のコツです。

この記事の著者

原 新

和食料理人としてオランダをはじめヨーロッパ各地で料理修行。帰国後は様々な修業を重ねたのち、地元・福岡で郷土料理や大麦料理、スープ専門店など、幅広い食文化に携わってきました。
その後、「料理の延長としてのパンづくり」をテーマに独学でパンの世界へ。ベーカリー経験ゼロからYouTubeで1800時間以上学び、一辺6cmの四角い“キューブパン”という形にたどり着きました。
雑穀マイスターとして穀物や発酵の個性を生かしつつ、最近はAIも活用して新しいフレーバーや商品アイデアを探るなど、職人の感覚とデジタルの知恵を掛け合わせた開発にも取り組んでいます。
「まつやまパン」では、“会話のきっかけになるパン”をテーマに、ちょっと楽しく、ちょっと深いパンづくりを続けています。

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