キューブパンの難しさ──完璧な“立方体”は偶然ではない

「四角いパンって、ただ型に入れて焼けばできるんでしょ?」
そう思われることが多い。
でも、実際は生地量1グラムのズレが形を壊す。
⚖️ 生地の重さ1グラムで変わる世界
キューブパンの理想は“正立方体”。
60mm×60mm×60mmの中に、
生地と空気と時間が正確に収まっていなければならない。
生地が多すぎると上が割れ、少なすぎると角が立たない。
焼成中の膨張率まで計算して、
「焼く前の生地重量」を微調整する。
それが職人の手仕事の核心だ。
🔥 焼成の「熱の偏り」との戦い
オーブンの中では、角と中央の温度が違う。
角が先に焼け、中央が遅れる。
ここを見誤ると、角がへこみ、立方体が崩れる。
焼き上がったキューブパンが“ピタッ”と立っているとき、
それは熱と水分と重力のバランスが奇跡的に整った瞬間だ。
🎲 立方体という究極の約束
キューブパンを焼くということは、
自然に対して「形を保て」と約束する行為に近い。
生地の個性を尊重しながらも、最後は完璧な角を求める。
人間のわがままと自然の揺らぎが拮抗する、その中間点に立っている。

