酵母はどこにでもいる──空気の中の“パン職人”たち

酵母というと、白い粉の袋を思い浮かべるかもしれない。
でも実は、酵母はあちこちに生きている。
空気中にも、果物の皮にも、人の手の表面にも。
つまり──パンは、世界そのものが発酵して生まれた食べ物だ。
🍎 りんごの皮にも、ぶどうの表面にも
自然酵母のパン作りでは、
果物や穀物の表面についた野生酵母を育てて使う。
りんごの皮を水につけて数日置くと、
ぷくぷくと泡が立ち始める──それが自然酵母の息吹だ。
空気がきれいとか、果物が新鮮とか、
そんな条件よりも“気候と気配”が大事。
まるで土地の個性が、パンの性格になるようだ。
🌾 パン屋は“酵母の調教師”
人工的に培養されたドライイーストも、
もともとは自然界から分離された酵母だ。
つまり、**どんな酵母も「自然の一部」**なのだ。
パン職人は酵母を支配しているのではなく、
むしろ一緒に踊っているようなもの。
酵母が気まぐれな日は、人間が合わせるしかない。
天気と発酵はよく似ている。
🌍 酵母はこの星の“見えない文化財”
海辺の空気、山の水、街の埃。
すべての場所に違う酵母が住んでいる。
その多様性がある限り、
人間はどこでもパンを焼ける。
だからパン作りは、
「世界と呼吸を合わせる行為」と言える。
なんてロマンチックな微生物だろう。

